オリエント世界と地中海世界
古代オリエント
オリエントはシュメール人から始まります。だた、このシュメール人が本当に謎の多い民族でして宇宙人説や日本人の先祖説、それどころか日本人説まであります。そんなシュメール人を本当に宇宙人にしてしまった作品が『青のメソポタミア』となります。古代遺跡が宇宙を飛んでおります。
正直、一冊目にこの本を紹介するのはどうかと思いましたが、 シュメール神話 をベースとした面白い作品です。個人的には宇宙人説や日本人説の動画だったり本を読んでも面白いと思います。大切なのはシュメール文明がその後アッカド人、バビロニア、ヒッタイトへと影響を与えたことです。
アッカド人のつぎに勢力を拡大したのがアムル人です。彼らが起こした王朝がバビロン第一王朝です。そして、ハンムラビ王の時代に全メソポタミアを支配しました。ハンムラビ王は「目には目を、歯には歯を』で有名なハンムラビ法典発布した王様です。その王を題材にした作品が『異法人』となります。 ハンムラビ王が現代日本にタイムスリップしてくるというトンでも設定でありながらもの凄く面白いです。
バビロン第一王朝後のオリエント世界はヒッタイト、ミタンニ王国、アッシリア、新バビロニア、アケメネス朝と目まぐるしく勢力が入れ替わります。面白い時代なのですが、その割に娯楽作品が非常に少ないのです。なのでとりあえず『学研まんがNEW世界の歴史 1 先史時代と古代オリエント』をお勧めします。世の中で世界史の入門とされている「マンガ 世界の歴史」です。個人的にこれを入門で使うのは良いと思っていません。正直、この漫画だけで物語としてイメージが定着するとは思えないのです。しかし、娯楽作品の少ない時代を繋ぐのには非常に有用な本です。
『学研まんがNEW世界の歴史 1 先史時代と古代オリエント』にヘブライ人がエジプトから脱出した話があります。これを丁寧に描いたのが『手塚治虫の旧約聖書物語 2 十戒』です。アトムで有名な手塚治虫先生が描いた旧約聖書の二巻で、天地創造から十戒、イエスの誕生までが描かれており非常に良い出来となっております。
ちなみに、映像化もされています。しかし、レンタルで出回っていないらしくあまり知られていません。さらに値段が高いので大人用に買うのはためらうかもしれません。子供のために買うのはアリかもしれませんが。とりあえず教科書を独学するために読むなら二巻と三巻の「出エジプト~バビロン捕囚」について読めば良いです。
アケメネス朝と遊牧国家マッサゲタイとの戦争を描いた映画に『女王トミュリス 史上最強の戦士』があります。この映画でアケメネス朝ペルシャのキュロス2世がマッサゲタイ族がいるカスピ海周辺に攻め込みました。そこで女王トミュリスに返り討ちうのを描いています。
また、 『学研まんがNEW世界の歴史 1 先史時代と古代オリエント』の後の話とはなりますが、『アレクサンドロス』で アケメネス朝 はアレクサンドロス大王の敵側として登場します。ダレオス一世の時代に最盛期をむかえダレオス三世の時代に滅びます。
アケメネス朝が滅んだ後、セレウコス朝、パルティアと続きます。パルティア(中国名で安息)が登場する映画が『ドラゴン・ブレイド 』です。
このパルティアを倒してササン朝が建ちます。そのササン朝に侵入してきたのが遊牧民のエフタルです。このエフタルという名前ですが漫画版の『風の谷のナウシカ』に登場します。名前だけ同じと思うかもしれませんが、ナウシカの舞台となっている地域は現実のトルコ周辺の地形と酷似しています。ちょうどトルメキアがトルコのあたりでエフタル砂漠がシリア周辺、土鬼連合がロシアに当たります。
ギリシア世界
現代のギリシアがある地域にオリエントからの影響を受けヨーロッパで最初の青銅器文明が誕生しました。それがエーゲ文明です。このエーゲ文明は複数の文明の総称でクレタ文明、ミケーネ文明、トロイア文明を含みます。この時代で有名なのが『トロイの木馬』です。吟遊詩人であったホメロスの英雄叙事詩『イーリアス』で語られている戦争の物語です。近代になるまで神話だとされていましたが、シュリーマンという考古学者により遺跡が発見され実在が証明されました。そしてその戦争を映画化したのが『トロイ』となります。作品自体はフィクションですが世界で最も有名な作戦の一つである『トロイの木馬』が上手に描かれています。
ミケーネ文明が滅亡したあと、400年ほど混乱した時代が続きます。その後現れたのがポリスという、城山を中心に人々が集住した都市です。ポリスは一つ一つが独立国家であったためギリシアは小国分立状態が続きます。その中で台頭してきたのがアテネとスパルタです。スパルタを映画化したのが『300 スリーハンドレッド』と『300 スリーハンドレッド 帝国の進撃』です。頭を空っぽにしてご覧ください。
つぎにアテネについてです。アテネは哲学から政治、戦争などかなり多くの物語があるので一作品で紹介するのは無理だと思います。なのでとりあえず『学研まんがNEW世界の歴史 2 ギリシア・ローマと地中海世界』のアテネの章を読んでもらいたいです。ちなみに、『 学研まんがNEW世界の歴史 1 先史時代と古代オリエント』の最後に起こっていたイオニアの反乱からペルシア戦争へと突入していきます。教科書での扱いはそこまで深くないので興味がなければそのまま流してもいいですが、もっと深く知りたいと思ったなら『ギリシア人の物語』あたりを読むのが良いかと思います。
アテネとスパルタの勢力に陰りが見えてきたころ、ポリスを作らなかったギリシア人国家のマケドニアが台頭してきました。そのマケドニア王であるアレクサンドロス大王が東方遠征を行い大帝国を建設します。そのアレクサンドロス大王の書記官となったエウメネスの人生を描いた作品が『ヒストリエ』となります。
残念なことにこの記事を書いている段階で『ヒストリエ』のアレクサンドロスはまだ若者で東方遠征には出ておりません。なので東方遠征を扱った『アレクサンドロス』も再度紹介しておきます。
漫画『ヒストリエ』についてです。作中で エウメネスが読んでいた歴史書ヘロトドスのラテン語表記がヒストリアイですし、日本でも歴史番組にヒストリエがあります。また、エウメネスは自身の出自をスキタイだと思っています。ただ、個人的にはエウメネスの出自はアケメネス朝で紹介したマッサゲタイなのではないかと予想しています。その理由としてヘロトドスではスキタイとマッサゲタイは同族と勘違いされています。しかし、実際はスキタイは マッサゲタイに追い払われて移住しています。そして、このマッサゲタイは最古の重騎兵を生み出した民族であり、中国方面から来たという説があります。エウメネスが作中で首飾りが子供用の鐙だと気づきましたが、鐙は中国発祥だと言われています。実際、作中に登場したスキタイは鐙を使っていませんでした。そして、史実としてアレクサンドロスの遠征でマッサゲタイと戦闘になっています。そのときに何かドラマがあるのではと期待しています。
ローマ世界
古代イタリア人が半島を南下してつくったのが都市国家ローマです。都市国家からはじまり共和政になりその後帝政に移行していきます。都市国家の時代から先住民のエルトリア人を通してギリシャ文化の影響を受けていました。最終的にエルトリア人の王を追放して共和制へ移行しました。共和制の時代になるとギリシャ人都市国家を吸収、併呑しています。征服はされましたが、ギリシャ文化はその後のローマに多大な影響を与えました。イタリア半島の全体を支配した後、地中海でカルタゴと衝突します。この戦争をポエニ戦争と言い、世界で最も有名な戦争の一つです。このポエニ戦争を題材にした漫画に『アド・アストラ ―スキピオとハンニバル―』があります。ポエニ戦争の結末は有名ですが、世界的に有名なスキピオとハンニバル、両将軍の最後がどのようなモノだったかをしっかりと描いてた作品は少ないのでぜひ最後まで読んでほしいです。
この後ローマは内乱の一世紀に突入します。混乱の原因を端的に言えば有力者が私兵を持ってしまったことでしょう。その混乱は最終的に剣闘士スパルタクスによる反乱に発展しました。 この出来事を描いた映画が『スパルタクス(2003)』です。古いですが出来は良かったです。ドラマ版の『スパルタクス』も勧めたいところなのですが、18禁の内容が含まれていますので大人のみご覧ください。 製作者の芸術性を尊重し、オリジナルのまま収録し ているそうです。
内乱の一世紀は軍事力によってしずめられます。ここで権力を握ったのがポンペイウス、カエサル、クラックスです。この三人と元老院との対立とガリア遠征を描いたガリア戦記は非常に有名な作品でファンも多いです。個人的には『ガリア戦記 ─まんがで読破─』が漫画としては非常によくできていると思います。ただ、販売が終了してしまっているのが残念です。ガリア戦記でガリア側を描いた作品として『アグリッパ-AGRIPPA-』があります。面白いですが、ガリア側から見たカエサルなのでローマの中がどうなっているかは分からないのが残念です。時間があるなら小説の『ガリア戦記』をちゃんと読むのをお勧めします。ちなみに作中でクラックスが戦死しますが、この戦争相手国が以前に紹介した 『ドラゴン・ブレイド 』に出てくるパルティアだったりします。
カエサル後を継いだのが養子のオクタウィアヌスです。イロイロあってエジプトの女王クレオパトラと国境を越えた恋愛をします。それを描い映画が『クレオパトラ』です。古い映画ですが、日本映画全盛期にハリウッドで製作されたため当時の日本でもかなり話題になった作品です。黒澤明監督を語る場合に必ず登場する映画と言っていいかと思います。ただ、上映時間が4時間5分もありますからよほど時間がある人しか見れないと思います。なので 『学研まんがNEW世界の歴史 2 ギリシア・ローマと地中海世界』で概要だけ理解しても問題はありません。教科書でも詳しくは扱われていません。
オクタウィアヌスは共和制を帝政に改めます。ここにローマ帝国が誕生しました。ローマ帝国の最初の200年は「ローマの平和」と呼ばれるほど安定した時代でした。この時代の全盛を築いたのが五賢帝と言われる5人の皇帝です。教科書ではトラヤヌス帝の時代に領土が最大になったとあります。この最大化した領土の安定と拡大政策の停止を行ったのがハドリアヌス帝です。そんな時代を描いた作品が『テルマエ・ロマエ』です。ローマにとって公共浴場とは非常に大切な文化なのですが、その設計技師が現代日本にタイムスリップして設計のヒントを得るという奇想天外な作品です。ローマ人も日本人のように風呂を愛していたということを世間に広めた作品で映画化もされています。
五賢帝時代が終わるとさすがのローマ帝国も行き詰まり始めます。帝国としてのまとまりが崩れてゆき、最終的に東西に別の国家として分裂します。最初に権力の分割を決断したのがディオクレティアヌス帝です。ローマが広すぎることで統治に支障が出ていると判断し、東西に正帝と副帝をそれぞれ置き4分割して領土を統治しました。普通に考えれば内輪もめをしてダメになりそうな政策ですがディオクレティアヌス帝の手腕が優れていたので彼が引退するまでは安定した政治が行われた。ただ当然、彼が引退すれば混乱します。その混乱した時代を描いたのが『ザ・ローマ 帝国の興忘 Vol.3』です。あと、ディオクレティアヌス帝は帝国の分割統治にあたり帝政から専制君主制へ転換を行いました。
ちょっと分かりにくいかもしれませんが、ディオクレティアヌス帝と次のコンスタンスティヌス帝からユリアヌス帝などを経てテオドシウス帝までは行政区画が分かれているだけで国家としてはローマという国です。テオドシウス帝がその2人の子供に完全に国家を分割して継がせます。これが東ローマ帝国 (ビザンツ帝国)と西ローマ帝国となります。ちなみに、西ローマ帝国は分割から100年も持たずに滅亡します。東ローマ帝国は1453年まで存続しました。
ローマを一通りなぞりましたが、あと一つどうしても扱わなければならない事があります。それがキリスト教です。キリスト教は皇帝ネロの時代からディオクレティアヌス帝の時代までは迫害されていました。コンスタンスティヌス帝の時代に公認されます。そしてテオドシウス帝が国教に定めました。
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