殷
キングダムで李牧が殷の紂王について駄目な王の代表として語っています。そう、彼こそ中国で最初に『駄目な王』と認定された王です。そんな王朝の話なのでさぞ短命な王朝かと思いきや、なんと30代も続いています。
殷の時代を扱った作品としては封神演義があります。古典小説とそれをアレンジした漫画があります。非常に面白いのですが、かなりファンタジー要素が入っています。ただ、中国の古典は仙人だったり怪物だったりが当たり前にでてきます。慣れる意味でも読んで欲しい作品です。
周
キングダムの王翦は周の霊王の裔孫にあたります。作中では『自分が王になりたい危険人物』という扱いを受けていますが、元々が王家の人なのです。そりゃ一族の悲願として国を持ちたいと思いますよ。
周を扱った作品としては春秋戦国時代に入りますが、『ミーユエ』があります。この作品には政の曾祖父である照王とその父である恵文王が出てきます。その部下に白起、司馬錯などの六将が文官には張儀がいます。さらに、この時代に法家である商鞅が法を徹底し、改良していきます。まさしくキングダム作中で李氏が語っていた法家そのものです。秦はこの時代には法治国家に変貌していたわけです。また、キングダムで突然暴れだす戎籊(じゅうてき)ですがこの作品を見ればその理由が分かります。
周という国はこの後の歴史にかなり影響を与えます。それは、儒教が周代を最良とし手本としているからです。李氏が『儒家と法家の戦争 』という表現をしていますがその後の歴史はまさしくその通りとなります。
春秋戦国から秦
キングダムは戦国末期から秦が中華統一を果たす物語です。法家思想を用いて統一を果たした始皇帝は儒家を弾圧します。儒家は法よりも上に思想があると信じてる人たちですから絶対に言うことを聞かない。法律で罰すると弾圧したことにされてしまう。
漢建国
始皇帝の死後、すぐに秦は崩壊します。このとき蒙恬に悲劇が襲います。また、毒国編で出てきた趙高が暴れまわります。国が滅びるということは覇権争いが始まります。このときの争いを楚漢戦争と言います。
楚漢戦争は日本で『項羽と劉邦』のタイトルが有名です。項羽はキングダムで出てきた項燕大将軍の孫にあたります。しかし農民の劉邦に負けてしまう。ここで中国史上初の農民から皇帝が誕生します。ついでに作中で隠れ儒家が暴れまわります。もはや秘密結社と言って過言ではない。
漫画の『劉邦』ですが、登場する始皇帝がキングダムの政とあまりにかけ離れているので個人的にはドラマの方が良いかと思います。どうも史実としては漫画で描かれているようなこともあったと言われています。ただ、儒家が意図的に悪く書いたとも言われています。
前漢
楚漢戦争に勝った劉邦は漢を建てます。ミーユエといいキングダムといい楚は何が悪いのか?そして前漢、武帝の時代に李信の子孫が登場します。まず、飛将軍と呼ばれた李広です。おそらく飛信隊の元ネタでしょう。つぎにその孫で悲運の将軍 李陵 です。面白いのが、李広の子である李当戸と李敢が皇帝のお気に入りをぶん殴ってます。どちらも相手が不問にしたことと、周囲の同情があって問題にはならなかったようです。自分よりも立場が上の相手に対し理不尽だと思えば鉄拳というそのまま信みたいな二人でした。
この時代で読むべき小説が『史記 武帝紀』です。漢は北方騎馬民族の匈奴に苦しめられていた。しかし、武帝は新戦法を駆使する衛青将軍を匈奴討伐の大将に任命し反撃を開始します。そして衛青の甥である霍去病将軍が匈奴本拠地の襲撃に成功するなどし大きな功績をあげます。同時代に李広、李陵がいましたが、新しい戦術の前に圧倒された形になってしまいました。ちなみに、『史記』を書いた司馬遷は六将司馬錯の子孫にあたります。
新
漢を前後に分断する王朝『新』です。その初代皇帝「王莽」はキングダムの王賁の子孫、ではありません。しかし王莽は儒家でしたので周の政治制度を復活させようとします。ただ、どんなに美化しようと、1000年くらい前の制度なので当然、大失敗に終わります。にしても、ここでも暴れまわる儒家は自分達が本当に正しいと思っていたのか。
後漢
後漢は三国時代への助走みたいな時代です。なんせ、初代の光武帝と二代目の明帝より後に即位した皇帝が全員20歳以下という状態。外戚と宦官が跳梁跋扈してる状態で、まだ王莽は矢面にたった分まともに見えます。
後漢の見せ場は新末後漢初と言われる後漢建国でしょう。そこを扱った娯楽作品として、『秀麗伝』があります。ヒロインの陰麗華の出身地が新野だったのは私は知りませんでした。後の三国時代に新野城は空城の計に使われます。また主人公の劉秀は光武帝として即位します。ちなみに、光武帝は日本に金印をくれた皇帝です。一度滅亡した王朝を再興させたのは歴史的にも稀で後の三国時代の人たちから非常に高く評価されています。
三国時代
漢が崩壊して起こった覇権争いは、三国の三つ巴までもつれました。そして最終的に統一したのがその三国ではないという驚きの結末になります。
三国志は多くの娯楽作品があります。私がオススメするのは『三国志 Three Kingdoms 』と『龍狼伝』です。ちなみにどちらにも司馬懿が出てきますが同一人物に思えないほどキャラが違います。そして、魏にいる司馬氏はキングダムの趙にいた司馬尚の子孫にあたります。
『三国志 Three Kingdoms 』は中国で制作された中国人が演じている作品です。中国の人から言わせると日本人が作る三国志は登場人物が日本人っぽくなってしまうそうです。本場の三国志としてこの作品をオススメします。
つぎにオススメする『龍狼伝』ですが史実から逸脱するファンタジーモノの三国志です。後半が超人対決のバトル漫画化してしまい評価が荒れている作品です。それでも、南越や匈奴をしっかりとした勢力として物語に組み込んでおり、登場人物のなかに後の五胡十六国で前趙を建てる劉淵の一族が出てきます。この後の時代で北方騎馬民族は歴史に大きな影響を与えますのでこのあたりでイメージをつかんでおくと良いかと思います。
晋
散々もめた三国時代のすえやっと統一国家が出来上がります。それが司馬尚の子孫の司馬炎が建てた晋です。ただ、統一を果たした司馬炎が急に堕落します。次の皇帝も当然のように残念な人が即位したため、晋は内部分裂状態になります。そうなると当然新興勢力が反乱を起こします。
司馬一族にスポットを当てた作品としては『三国志 司馬懿 軍師連盟』があります。おそらく、日本で見れる三国志の作品でここまで曹一族と司馬一族の権力争いを描いたものは無いと思います。実際に見れば「そりゃ、あそこまで信用されなければ簒奪したくもなる。」と思うでしょう。
五胡十六国時代
晋が内部分裂状態に陥った隙をついて北部の匈奴が最初に動きます。晋の北部をかっさらい前趙を建国します。ただ、それよりも南下しなかったため、晋は東部に領地が残り東晋として継続します。その後、漢民族、匈奴、羌、鮮卑、氐などの多数の民族が建国を行い100年以上中国は統一されない状態が続きます。
前趙を建国した劉淵ですが、父親がすでに紹介した作品に出ています。それが『龍狼伝』に出てくる豹です。呼廚泉が豹のことを「兄の子」と言っているのです。史実では呼廚泉の兄は於夫羅でその子は劉豹です。そして、劉豹の子が劉淵となります。史実でも『龍狼伝』でも司馬氏を全力で殴りに行っています。
五胡十六国時代の末期ついに李信の子孫が国を建てます。それが西涼です。初代の李暠は李広の子孫を自称してるのですが本当に直系かは不明らしいです。ただ、河西地域において李一族が権力をもってたのは事実です。正直、李信の子孫は謎が多いです。有名な将軍を輩出したり、建国したりしてるのにある特定の時代にまったく出てこなかったりします。
南北朝
すでに、100年ほどもめておりますが、さらに200年近くもめます。それが南北朝時代です。五胡十六国時代との違いは国の規模が大きいです。だいたい2国か3国くらいに分裂しています。
この時代はもともと日本でも有名な物語があります。それが『蘭陵王』です。雅楽に演目があり、三島由紀夫先生の作品もあります。蘭陵王こそが、中国人が想像する理想的なカッコ良い男なのだと思います。実際、イロイロと中国の歴史ドラマを見てきたのですがこの時代のドラマは男性役を色男にやらせる傾向があります。あと、お面にデザインについて考えてはいけません。そのあたりは『蘭陵王后』の方が忠実だったように思えます。
隋
300年ぶりに統一を果たした中国ですが、隋は2代で潰れます。ちなみに、統一した楊堅はちょっと面白いところに先祖が登場します。それは前漢の武帝の息子で帝位を継いだ昭帝の丞相「楊震」です。しかも、この楊震は「史記 武帝記」に出てきた司馬遷の娘に婿入りしています。イメージとしては「司馬家にいるマスオさん状態の昌文君」でしょうか。
この時代を一番わかりやすく描いているのは『独孤伽羅』だと思います。時代としては『蘭陵王』とほぼ同じです。ところで、日本史で遣隋使と遣唐使を習ったときにやたらと簡単に隋が無くなったことに違和感を感じませんでしたか。大きな戦争があったわけでも無いのに、皇帝の血族は変わっています。実は北周、隋、唐の皇帝の后は独孤信将軍の娘3人が嫁いでいます。要するに女系で親戚だったのです。あと、ドラマを見れば何故国名が隋になったかわかります。
唐
隋は二代目の煬帝がやらかして潰れます。その後、中国を統一したのが李淵です。そう、ついに李信の子孫が皇帝なったのです。ただ、西涼の李暠の子孫なので自称ということになりますが、どちらにしても李家という名門の出であることは間違いないです。
唐で面白い作品としては『武則天』でしょう。李淵の子「李世民」と「武則天」の物語です。李世民の統治は後世で理想的な政治だったと評価されるほどの名君でした。その后であった武則天も女性初の皇帝として君臨したので評価が割れますが、政治家としての手腕は非常に高かった。唐建国期を体現する二人の物語です。ちなみに、武則天役のファン ビンビン さんですが現代中国においてかなり有名な人です。当人が日本では知名度が無いことに驚いたエピソードがあります。
五代十国
300年ほど続いた唐でしたが、200年を超えたあたりから国として衰え始めます。利権争いが激化し、改革も上手くゆかず。結局、10世紀初頭に滅び、そこからまた分裂状態に突入します。ここで重要になってくるのが、北方の動向です。北方民族の耶律阿保機が建国した契丹(遼)が燕雲十六州を取り込み国力を増します。
この時代で面白い小説としては『楊家将』と『血涙』です。宋建国の立役者と言われる楊業とその息子たちの物語です。また宋を建国した趙匡胤の祖先の趙広漢は『史記 武帝記』に出てくる霍去病の弟である霍光の部下でした。
北宋
北宋といえば『水滸伝』でしょう。宋末期に新国家建設を目指す好漢たちが宋という大国と戦う話です。紹介する小説の『北方 水滸伝』は中国の古典を整理して日本向けの長編小説に書き直したモノです。賛否ありますが原典は日本人には少し分かりにくいですね。続編に『楊令伝』『岳飛伝』があります。ちなみに、『水滸伝』に出てくる楊志は楊業の子孫という設定です。
南宋
南宋の時代で一番の衝撃は『楊家将』で猛威をふるった遼が金に滅ぼされたことでしょう。金はその勢いのまま宋にも進撃し『水滸伝』でイロンナモノの巣窟と化していた開封を占領します。なんとか逃げ延びた皇帝が臨安を首都に南宋を建てます。
南宋では金との関係において和平派と主戦派で割れます。その主戦派の中心人物が岳飛です。『楊令伝』で梁山泊とは別の形で国を憂いていた岳飛がついに歴史の表舞台に出てきます。
元
元は中国史において日本で最も知名度のある時代ではないでしょうか。なんせ二度も日本にせめてきたのですから。教科書などには登場しませんが占領を受けた対馬は本当に悲惨なコトになりました。まあ、当時の執権 北条時宗が元の使者を容赦無く切ってますので仕方ないかもしれませんが。このようなことは当然日本以外の国でも同じでモンゴル帝国に容赦なく滅ぼされた国は多数あります。
モンゴル帝国時代で面白い作品としては『シュトヘル』があります。モンゴルにより亡国の際にある大夏、その文字を守るために逃避行するユルールの物語です。まずチンギスハーンの息子であるトルイですが、その子供のクビライが元の初代皇帝となります。次に作中で滅ぼされようとしている大夏ですが王族の姓が李です。しかし残念なことに李信の一族ではありません。ただ関係があります。大夏の初代皇帝 李元昊の先祖は唐末期の反乱のとき、唐を援助しその功績で国姓の李をもらっています。そしてユルールを育てた玉花は大夏かから輿入れしているので李元昊一族の血縁である可能性が高いです。となると兄であるハラバルも血族となりそうです。
明
明の初代皇帝 朱元璋 は歴史上のヤバイ人物として必ず名前が上がります。なんせ、明建国に尽した部下とその家族を全員死刑にしました。また、文人も弾圧し明代の漢詩等の文化は停滞します。その反面、庶民のための学校を全国につくるなどとにかく農民に優しい皇帝でした。朱元璋 自身が農民出身だったことが良い方と悪い方の両方にでたと言えます。また、文官への粛清が苛烈だったため文官が萎縮しほぼ皇帝の能力がその時代の治世の出来になってしまった。賢帝が続けば良かったのだが、賢帝の治世は短く暗愚な皇帝の治世は長いという最悪な国家運営になってしまった。
あまり日本で明代の話が話題になることが無いのですが、朱元璋は間違いなく農民から皇帝になったすごい人です。そのせいか明という時代のドラマは建国がクライマックスと言っていいかと。実際、教科書にも朱元璋の後は永楽帝と万暦帝くらいしか記述がありません。朱子学や陽明学のように日本に影響を与えた学問が出てきた時代でもあります。
つづいて永楽帝の時代を扱ったドラマで『大明皇妃』です。永楽帝が帝位につくために起こした「靖難の変」を元に描かれています。主人公は後に皇太后となる孫若微です。正直言えば世界史の勉強という意味ではそこまで重要な皇帝でも人物でもないのです。どちらかと言えば、永楽通宝を作った皇帝なので日本史を勉強している人の方がなじみがあるかもしれません。それでも紹介しているのはやっぱり面白いからですね。このサイトを作り始めたときはまだ中国でしか放送されておらず、日本には入ってきていませんでした。
李さん関係として『黄土の旗幟のもと』という漫画を追加しておきます。これは、明末期に反乱を起こした李自成の話です。登場人物に李信という人物がいたりしますが特にキングダムの信とは関係ありません。残念なのはせっかく反乱が成功した李自成ですが建国後すぐに清に滅ぼされてしまいます。
清
清は前半で栄華を極め、その後西洋列強にズタズタにされた経緯のせいかドラマの多い時代です。
清の栄華は康熙帝、雍正帝、乾隆帝の三代の賢帝によって作られた。その時代のドラマとして面白いのが『宮廷の諍い女』です。雍正帝の妃嬪となった甄嬛の物語で、主演はミーユエでも主演だったスンリーです。個人的に多数みた中国歴史ドラマの中で1位2位を争う出来だと思っています。
次に清末期のドラマとして『蒼穹の昴』をオススメします。衰退の一途をたどる清において、西太后と光緒帝、保守派と改革派との闘争にまきこまれていく兄弟の話です。
中華民国
もう時代としては近現代にあたるので作品は多くあります。その中から映画をオススメします。『宋家の三姉妹』と『孫文-100年先を見た男』です。中国革命の父 孫文の物語です。
中華人民共和国
やっと現代まできました。まあ、ここまでくると歴史というよりも政治の分野に入っていきますね。
中国史の最後に
コレだけの作品を最初から歴史と関連させて読んだり見たりすれば教科書における中国史でまったく知らない時代というのはほぼ無いと思います。特に先祖や子孫の繋がりは他のサイトに無い特徴ですので面白いと思っていただけたなら幸いです。
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